マンションの評価額とは?種類や調べ方、計算方法を解説

マンションの評価額には、その目的に応じて複数の種類が存在します。たとえば、代表的な例としては固定資産税評価額、相続税評価額、そして実勢価格などが挙げられます。そこで、今回の記事では、それぞれの目的や用途、さらには計算方法について詳しく解説していきます。

目次
  1. マンションの評価額が必要な場面とは
  2. マンションの評価額は主に6種類
  3. どの評価額を用いるべきか困ったら
  4. 評価額で支払うべき税金は推定できる
  5. 2024年1月1日以降の新しい相続税評価ルールとは
  6. 住み替えや相続でマンションを売却するなら三井のリハウスに相談を!
  7. よくある質問
記事カテゴリ 売却 費用 税金 マンション
2025.07.16

マンションの評価額が必要な場面とは

マンションの「評価額」とは、そのマンションの価値を金額で示したものです。そして、重要なのは「何のために評価された価値なのか」によって、複数の種類が存在する点です。

たとえば、税金を計算するための評価額がある一方で、実際に売買される際の市場価格や、火災保険の補償額を決定するための評価額もあります。このように目的が異なる場合には、評価の基準や算出方法が変わり、その結果として金額も異なってきます。

以下は、代表的な評価額の種類と概要です。

種類確認できる書類・方法評価額の決まり方確認できる時期・タイミング
固定資産税評価額・納税通知書
・固定資産評価証明書
・固定資産公課証明書
・市町村(東京23区は都)の判断・納税通知書:毎年4月~6月ごろ(郵送)
・証明書:随時(役所窓口で申請)
相続税評価額・土地:路線価図・評価倍率表
・建物:固定資産税評価額
・税理士への相談
・国税庁、市町村
(評価計算は納税者または税理士が行う)
・路線価図:毎年7月初旬ごろ公表
・固定資産税評価額:上記参照
・相続/贈与時
実勢価格・不動産会社による査定
・不動産情報サイトの取引事例
・市場・随時(売買検討時など)
公示価格・国土交通省Webサイト・国(国土交通省)・毎年3月下旬ごろ公表(1月1日時点価格)
基準地価・都道府県Webサイト
・国土交通省Webサイト
・都道府県・毎年9月下旬ごろ公表(7月1日時点価格)
火災保険料評価額(建物評価額)・保険契約時の見積書
・保険証券
・保険会社・保険契約(見積もり)時
・契約更新時
・契約期間中(証券確認)
不動産鑑定評価額・不動産鑑定評価書・不動産鑑定士・不動産鑑定評価書受領時

今回の記事では、これらの評価額について詳しく解説していきます。

マンションの評価額の決定

マンションの評価額は主に6種類

上記で挙げた通り、マンションの評価額は、目的に合わせて主に以下の6種類があります。

・固定資産税評価額
・相続税評価額
・実勢価格
・公示価格・基準地価
・火災保険料評価額(建物評価額)
・不動産鑑定評価額

それぞれ順番に解説していきます。

固定資産税評価額

固定資産税評価額は、市町村が固定資産税を計算するための基準となる価格です。また、固定資産税評価額は、マンションを市街化区域に所有している人に課税される都市計画税や、取得時に発生する不動産取得税、さらに登記登録を行う際に必要な登録免許税などを計算する際の基準としても活用されます。

さらに、この固定資産税評価額は、各市町村(東京23区は都)の固定資産評価員が、所定の評価基準にもとづいて個別に決定します。そして、評価額の数値は3年に1度の頻度で見直されており、直近では2024年に見直しが行われました。

●固定資産税の計算方法についてはこちら

相続税評価額

相続税評価額は、相続税や贈与税を計算する際の基準となる価格です。一般的に市場価格よりも低い水準で評価されます。また、マンションの相続税評価額は、土地部分と建物部分に分けて計算される仕組みになっています。

まず、土地部分については、原則として相続税路線価にもとづいて評価されます。しかし、路線価が定められていない地域では、固定資産税評価額に倍率をかけて計算する倍率方式が用いられます。一方、建物部分は、そのマンションの固定資産税評価額と同じ金額になることが一般的です。

そもそも路線価とは、国税庁が全国40万地点の道路を標準値として設定し、鑑定評価を参考に道路の価格を決定したものです。

さらに、2024年1月1日以降に相続したマンションについては、相続税評価額の計算方法が改正されました。後ほど詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。

●相続税評価額の計算方法についてはこちら

相続税評価額を用いて計算

実勢価格

実勢価格とは、一般的な不動産に対する周辺相場や需給バランスなどさまざまな要素を考慮して計算された、実際に不動産の売買取引が成立する価格を指します。また、実勢価格は、市場価格や時価ともいわれています。

公示価格・基準地価

公示価格(地価公示価格)と基準地価は、国や都道府県が公表する土地の価格指標です。公示価格については、国土交通省が毎年3月下旬ごろに発表します。この価格は1月1日時点の全国約2万3,000か所の地点(標準地)での土地売買価格を反映しています。

一方、基準地価は、都道府県が毎年9月下旬ごろに公表するもので、7月1日時点の都道府県内の基準地の正常な価格を示すものです。さらに、これらの価格は、固定資産税評価額や相続税評価額など、ほかの評価額を算出する際の基準としても用いられます。

●公示価格についてはこちら

火災保険料評価額(建物評価額)

火災保険料評価額(建物評価額)とは、保険の対象となるマンションの価値を示す金額です。そして、この評価額を基準に、建物に設定される保険金額(補償の上限額)が決定されるとともに、保険料も算出されます。この評価額は、一般的に同等のマンションを新たに建築・購入するために必要な費用(新価・再調達価額)を基準として設定される仕組みです。

保険と書かれたブロック

不動産鑑定評価額

不動産鑑定評価額とは、土地や建物を不動産鑑定士が不動産鑑定評価基準に従って鑑定した価額のことをいいます。不動産鑑定評価額は、不動産の適正な価格を判断することを目的とされた制度で、路線価や公示価格などの公的な指標にもなっています。

主に裁判や調停における公的な書類として必要になることがあります。また、実勢価格と大きく乖離する可能性のある無道路地(道路に接していない宅地)や特殊な条件の不動産では、税金の申告に不動産鑑定評価額を用いる場合があるでしょう。一方で、一般的な売買であれば、各不動産会社が行う査定で十分であるケースがほとんどです。

三井のリハウスでは、マンションの査定を無料で行っています。ご自身が所有する物件の価値を知るためにも、ぜひご相談ください。

●マンションの査定についてはこちら

どの評価額を用いるべきか困ったら

ここまで各種評価額について解説しましたが、「結局どの評価額を用いればよいの?」と疑問に思う方もいるでしょう。以下は、各シーンにおいて評価額が必要なタイミングと調べるべき評価額の早見表です。

用途評価額が必要なタイミング調べる評価額
・マンション所有時に価格を調べる場合・固定資産税を調べるとき・固定資産税評価額
・マンションの相続・贈与をする場合・相続税を調べるとき・相続税評価額
・マンションを売買する場合・不動産売買時に価格を調べるとき・実勢価格
・公示価格
・基準価格や不動産価格指数など公的機関が示す価格
・不動産会社が提示する査定額
・不動産鑑定評価額
・マンションの価値を証明する場合・マンションを担保に借り入れするとき
・監査法人に見せる必要があるとき
・不動産鑑定評価額
・離婚する場合・財産分与の計算をするとき・不動産鑑定評価額
・火災保険に加入する場合・保険金額を決定するとき・火災保険料評価額(建物評価額)

この表をもとに、自身の状況に合わせて適切な評価額を使いましょう。

評価額で支払うべき税金は推定できる

評価額は、支払う税金の目安を把握する際にも活用できます。以下では、「売却」「購入」「維持」「相続」にまつわる税金について、目安となる税額の算出方法を解説していきます。

マンションを売るとき

マンションを売却する際、最も重要となる評価額は実勢価格(時価)です。これは、売却金額に応じて発生する税金に関連します。実際に支払う税金の計算方法については、以下の記事で詳しく解説します。

●マンションを売却する場合にかかる税金についてはこちら

実勢価格を知るには、不動産会社への査定依頼がおすすめです。不動産会社の査定は、無料で行われます。また、マンションの査定方法には主に以下の3種類があります。

・AI査定
・簡易(机上)査定
・訪問査定

AI査定や簡易(机上)査定を利用すれば、自宅に関する簡単な情報を入力するだけで、おおまかな相場が分かります。売却をより真剣に検討している場合には、不動産会社の担当者が実際に物件を調査する訪問査定へ進むことで、さらに高精度な査定を受けることが可能です。

三井のリハウスでは、豊富な取引事例にもとづく高精度なAI査定を無料で提供しています。まずはお気軽に査定を試してみてはいかがでしょうか。

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所有マンションの査定

マンションを買うとき

マンションを購入する際にかかる税金は主に以下の4つです。

・不動産取得税
・登録免許税
・印紙税
・消費税

不動産取得税は「固定資産税評価額×3%(2027年3月31日までの軽減税率)」で算出できます。そのほかの税金の計算方法については、以下の記事で詳細に解説していますので参考にしてみてください。

●マンションを購入する場合にかかる税金についてはこちら

マンションを維持するとき

マンションに住む(維持する)際にかかる税金は、主に固定資産税と、一定の地域に所在する場合にのみかかる都市計画税です。まず、固定資産税は「固定資産税評価額(課税標準額)×1.4%(標準税率)」で算出されます。また、新築マンションや指定の住宅については、一定期間、税額が減額される軽減措置が適用されることがあります。詳しくは、お住まいの地域の自治体に確認しましょう。

一方で、都市計画税は、原則として都市計画法にもとづき市街化区域内にマンションがある場合に課される税金です。この税額は、「固定資産税評価額×税率(上限0.3%)」で算出されます。また、固定資産税と同様に、軽減措置が適用される場合もあります。

マンションを相続するとき

マンションを相続する行為そのものにかかる税金はありませんが、マンションの相続税評価額も含めた被相続人の資産や負債の合計が以下の金額(基礎控除額)を上回る場合、相続税が加算されます。

3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

上回った分の金額に応じて、以下の通りの税率で課税されます。

上回った金額税率控除額
1,000万円以下10%なし
1,000万円超から3,000万円以下15%50万円
3,000万円超から5,000万円以下20%200万円
5,000万円超から1億円以下30%700万円
1億円超から2億円以下40%1,700万円
2億円超から3億円以下45%2,700万円

また、相続したマンションを売却する場合には、「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」や「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」といった税制上の優遇措置が適用されることがあります。これらの特例について詳しく知りたい場合は、国税庁のWebサイトを確認しましょう。

●相続税評価額の計算方法はこちら

●被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例についてはこちら

●相続財産を譲渡した場合の取得費の特例についてはこちら

2024年1月1日以降の新しい相続税評価ルールとは

新しい評価ルールは、2024年1月1日以降に相続・遺贈・贈与によって取得した居住用マンションに適用されます。このルールの基本的な考え方は、従来の計算方法による相続税評価額が実勢価格(推定値)の6割に満たない場合、「評価額を実勢価格(推定値)×60%まで引き上げる」というものです。

今回の見直しの背景には、実勢価格と相続税評価額の大きな乖離による「タワマン節税」の流行があります。特に、都心部のタワーマンションでは、市場での売買価格(実勢価格)が相続税評価額を大幅に上回るケースが多く見られました。

さらに、この評価額の差を利用して、相続税対策としてタワーマンションを購入する動きが見られました。つまり、現金で相続するよりも、評価額の低い不動産(特に実勢価格との価格差が大きいタワマン)に換えて相続することで、相続税の負担を意図的に軽減することが可能だったのです。

しかし、このような状況では、同じ価値の財産を持っていても、その形態(現金か不動産か、またはどの不動産か)によって相続税負担が大きく変わってしまうため、「課税の公平性」の観点から問題視されました。その結果、国税庁は実勢価格と著しくかけ離れた相続税評価額を是正し、より公平な課税を目指すために評価方法の見直しを行いました。

新しい評価ルールが適用されるマンション

住み替えや相続でマンションを売却するなら三井のリハウスに相談を!

これまで、マンションにまつわるさまざまな評価額について解説してきました。特に、評価額を意識しなければならないのは、マンションの購入や住み替えを行う場合です。なぜなら、マンションの評価額によって将来支払うべき維持費や税金が変わるためです。

また、売却時や相続時においては、マンションの実勢価格を知ることが非常に重要です。なぜならば、実勢価格と評価額のギャップを知ることや、評価額をもとにした税金の計算を正確に行い、しっかりと資金計画を立てる必要があるからです。

三井のリハウスでは、豊富な取引実績と全国に展開するネットワークを生かして、高精度な査定と早期の売却をサポートしています。ぜひ一度、お気軽にお問い合わせください。

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よくある質問

固定資産税評価額と市場価格の主な違いは何ですか?

固定資産税評価額は、市町村が固定資産税を計算するために定める価格であり、3年に1度見直されます。一方で、市場価格は実勢価格とも呼ばれ、実際に市場で取引される価格を指し、需要と供給の状況によって常に変動します。一般的には、固定資産税評価額は市場価格よりも低い水準に設定されています。

特定のエリアの公示価格はどこで確認できますか?

国土交通省の不動産情報ライブラリで確認できます。

●不動産情報ライブラリはこちら

マンションの不動産鑑定評価を検討すべきなのはどのような場合ですか?

相続の際の遺産分割や離婚に伴う財産分与、マンションを担保に融資を受ける場合、あるいは裁判所に客観的な不動産価値を証明する必要がある場合などです。

マンションを所有することは、ほかの資産と比較して税制上の利点がありますか?

現金のような金融資産は、そのままの金額が相続税評価額になりますが、不動産であるマンションは、相続税評価額が市場価格よりも低いのが一般的です。そのため、相続税評価額を抑えられる可能性があります。ただし、2024年の高層マンションの評価方法改正により、この利点が縮小する場合もあるので注意が必要です。

不動産の路線価はどのように調べますか?

国税庁のWebサイトにある「路線価図・評価倍率表」で調べられます。

宮原裕徳

株式会社ラムチップ・パートナーズ 所長。税理士。日本のみならず、東南アジアも含めた不動産にかかわる会計・税務に精通している。法人や個人向けに節税セミナーなども行っている。
https://www.miyatax.com/