木造住宅の耐用年数とは?寿命を伸ばすポイントも解説

住居用の木造住宅の法定耐用年数は22年ですが、物理的な寿命は日頃のメンテナンスや建材次第でもっと長くなる可能性が十分にあります。では法定耐用年数と物理的な寿命は何が違うのでしょうか?この記事では、木造住宅のさまざまな耐用年数や、減価償却と耐用年数の関係について解説します。

目次
  1. 木造住宅の耐用年数とは?
  2. 木造住宅の法定耐用年数は減価償却で用いられる
  3. 木造住宅の耐用年数を超えると固定資産税はどうなる?
  4. 木造住宅に用いられる建材の種類
  5. 木造住宅の寿命はメンテナンス次第
  6. 売却を検討している場合は早めに不動産のプロに相談しよう
記事カテゴリ 売却 一戸建て
2024.08.30

木造住宅の耐用年数とは?

木造住宅の耐用年数にはさまざまな種類があり、それぞれ意味することは異なります。木造住宅の耐用年数とは、一般的に以下の3つの視点で用いられます。

・法定耐用年数
・物理的耐用年数
・経済的耐用年数

それぞれについて、順番に解説していきます。

木製の家の模型

法定耐用年数

法定耐用年数とは、償却資産を通常通りに修繕しながら使用した場合、通常予定される効果をあげることができる年数を指します。相続や売却、投資による収入に対する各種税金について、納めるべき金額を求める際の減価償却に用いるために法律上定められています。住宅ローン審査で利用されることもあり、税の公平性を担保するためにも必要です。

減価償却とは、住宅や車両、工具といった償却資産を購入した際に、一度の確定申告で経費計上せず、複数年で分割して経費計上する会計処理です。時間の経過とともに価値が減少していく資産において、減価償却を行うことで、法定耐用年数の期間内にわたって分割して購入費用を計上します。たとえば、50万円の備品を5年間にわたって10万円ずつ償却していくなどが考えられます。

木造住宅の法定耐用年数は22年ですが、この年数を超えると住めないというわけではありません。築50年の木造住宅であっても住んでいる人がいるのは、前述の通り、法定耐用年数は減価償却の計算に用いられるものであり、寿命ではないためです。

物理的耐用年数

物理的耐用年数とは、いわば木造住宅本来の寿命、つまり、建物を物理的に使用できる期間のことを指します。しかし、木造住宅の物理的耐用年数は、木材の種類や工法、メンテナンス状況にも左右されるため、一概に述べることはできません。海に近い家は塩害の影響を受けますし、雨の多い地域ではそうでない地域よりも屋根や壁をはじめとする部品の劣化が早いことがあります。木材の劣化や部品の損傷は災害に対する耐久性といった重要な部分にも影響してくるため、住まい環境に応じた見極めが必要です。

倒壊した木造住宅

経済的耐用年数

経済的耐用年数とは、対象の木造住宅の経済的価値が何年にわたって続くかを示すものです。物理的には居住できても、築年数が経過するほど資産としての価値は減少していくため、住宅ローン融資の際に金融機関は、建物の法定耐用年数だけでなく経済的耐用年数も加味して借り入れ可能期間を決定します。劣化具合や設備状況といった物理的な面以外に、市場で取引される価値を加味するため、人々の需要に左右されて変動しやすい傾向にあります。

木造住宅の法定耐用年数は減価償却で用いられる

先ほども触れたように、木造住宅の法定耐用年数は減価償却に用いられます。減価償却が用いられるのは、一般的に以下の2つのケースがあります。

・賃貸収入を得ている場合
・住宅を売却する場合

具体的にどの過程で減価償却が必要となるのか、詳細は以下の記事をご覧ください

減価償却が必要となる場面について詳しい記事はこちら

また、減価償却には、「定額法」と「定率法」という2種類の計算方式があります。定額法は、償却資産の金額に一定の割合をかけて減価償却費を求める方法で、たとえば、100万円の備品について、償却期間を5年に設定すると、償却率0.2をかけることで毎年20万円ずつ償却することになります。

定率法は、耐用年数の当初に多く減価償却を行い、それから徐々に減価償却費が減っていくという償却方法で、償却残高に定率法の償却率をかけて計算します。償却額が毎年同額ではないという点が重要です。

定額法と定率法のどちらを適用するかは、償却資産の持ち主が個人事業主か法人かどうかや、資産の種類によって異なります。原則として、個人事業主は定額法ですが、税務署に届け出れば変更できる場合があります。しかし、建物は定額法のみとなるため、どちらの計算方式とするかは、資産の種類に応じて確認するようにしましょう。

減価償却費の書類と現金と電卓

木造住宅の耐用年数を超えると固定資産税はどうなる?

先ほど、法定耐用年数とは、通常予定される効果をあげることができる年数であるとご紹介しました。では、この期間をすぎれば税金を納める必要はなくなるのでしょうか?答えはNOです。

木造住宅の耐用年数を経過し、減価償却が終わった資産であっても、固定資産税は納めなければなりません。固定資産税とは、住宅の所在地を管轄する市町村が課税する地方税で、固定資産税評価額をもとに計算されます。固定資産評価基準では評価額の最低限度額は取得価額(購入金額)の5%のため、耐用年数の経過とともに金額は減少していきますが、ゼロになることはないのです。つまり、住宅がある限り固定資産税の納税は発生します。

なお、固定資産税の減価償却金額は定率法で計算されています。定率法とは、先ほども紹介した通り、まだ減価償却していない残高に対して、一定の割合をかけて減価償却費を求める方法で、毎年定率法による減価償却を繰り返し、取得価額の5%を下回った年から5%の額が固定資産税額となります。

TAXと書かれた木材が積まれている

木造住宅に用いられる建材の種類

木造住宅とは、建築材として主に木材を使用している住宅を指しますが、一口に木材といってもさまざまです。物理的耐用年数(寿命)を左右する要素の1つに、建築に用いられる建材の種類がありますが、そのなかでも代表的な以下の2種類について紹介します。

・集成材
・無垢材

それでは順番に見ていきましょう。

集成材

集成材とは、加工された複数の木材を接着剤でつなぎ合わせて生成される人工的な建材です。加工段階で用途に合わせた木を選んでいるため、強度が高く品質が安定しており、後述の無垢材と比べて安価な点がメリットです。ほかにも反りや割れが少なく、施工後の変形が少ないといった点も特徴として挙げられます。集成材のなかにも、造作用や構造用、化粧張り造作用などがあり、予算や用途に応じて使い分けることができるため、素材となる木の種類や使われた接着剤、加工した環境などによって強度が左右される点には注意が必要です。

無垢材

無垢材とは、天然の一本の木そのものから作り出された建材のことです。自然の素材を生かしているため、調湿性に優れ、天然ならではの質感があることがメリットです。しかし、天然の木を丸ごと使用するため、個体差があり、品質に差が出かねない点や、一定の樹齢の木を必要とし、木を見極めるのも技術が必要であることから高価なこと、施工後に変形や割れの恐れがあることが注意点として挙げられます。

なお、建材として一般的に利用される木の種類はいくつかあり、それぞれの特徴と併せて紹介します。

木の種類特徴
スギ柔らかく、加工性に優れており、国産材のなかでは安価
ヒノキ耐朽性が高く、加工もしやすい。独特の芳香を放ち、高級材として知られる
ヒバ強度や耐水性が高く、害虫対策にも有効
マツ耐水性があり、比較的安価
クリ耐久性があるため、土台に最適だが、比較的入手が難しい
ケヤキ硬くて強度があり、建築材以外にも家具用材に使われる

このように、雨の多い地域であれば、耐水性の高い木材、耐震性を高めたいから強度の高い木材を選ぶなど、予算や用途によって用いる木の種類を選ぶことが重要です。

木造住宅の建築現場

木造住宅の寿命はメンテナンス次第

木造住宅をできるだけ長持ちさせるためには、メンテナンスが必須です。多くの場合、築年数が経過している物件でも、メンテナンスによって物理的な寿命を伸ばすことが可能であり、上手に手入れすれば100年住み続けることも可能です。

築年数がかなり経過していて現在の新耐震基準を満たしていない木造住宅であれば、耐震補強工事を行うことも選択肢の1つでしょう。ほかにも、菌類による木材の腐敗や、白アリをはじめとした昆虫類による食害に注意し、こまめなメンテナンスの実施をおすすめします。

腐敗した木材

売却を検討している場合は早めに不動産のプロに相談しよう

これまで、木造住宅の複数の耐用年数についてや、法定耐用年数を適用する場面、木材の種類やメンテナンス方法について解説してきました。木造住宅は鉄筋コンクリート造や鉄骨造と比較して法定耐用年数が短く、減価償却できる期間が短いほか、ほかの建材と比べて経済的な耐用年数も短い傾向にあります。ライフステージの変化に伴う引越しや住み替えをお考えの場合、お住まいの自宅の耐用年数を考慮すると、できるだけ早めに売却したほうが高く売れる可能性が高まります。売却を検討している場合は早めに不動産のプロに相談することが大切です。

三井のリハウスでは、豊富な経験や取引実績を生かして高精度な査定をご提供します。現時点での家の状態ではどのくらいの価格で売却できるかが気になる方は、お気軽にご相談ください。また、査定後は、お客さま一人ひとりの相談に寄り添いながら売却活動をサポートさせていただきます。木造住宅の売却をご検討中の方は、ぜひ一度三井のリハウスへお気軽にお問い合わせください。

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監修者:ファイナンシャル・プランナー 大石泉

株式会社NIE.Eカレッジ代表取締役。CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士などの資格を保有。住宅情報メディアの企画・編集などを経て独立し、現在ではライフプランやキャリアデザイン、資産形成等の研修や講座、個別コンサルティングを行っている。