
成年後見人になれる人とは?親族がなる場合のメリットや手続きを詳しく解説
家族が認知症になった際は、成年後見人を立てることで、不動産や金融などの法的な契約や手続きを行えます。この記事では、成年後見人になれる人の条件や資格の必要性、家族が後見人になる場合のメリットと注意点について解説していきます。
目次
成年後見人になれる人
「成年後見人は誰がなれるのだろう?」と疑問に思う方もいるのではないでしょうか?実は、成年後見人になるために特別な資格は不要で、家庭裁判所に適任と認められれば誰でもなれるのです。
そもそも成年後見人とは、成年後見制度に基づき、認知症や精神上の障害によって判断能力が落ちた人の財産管理や各種契約、生活支援をする人のことです。成年後見制度には「法定後見制度」と「任意後見制度」があり、家庭裁判所から成年後見人の選任を受けなければ、成年後見人になることはできません。この場合、被後見人の希望する人が成年後見人に選ばれるとは限らず、選任された後見人について不服を申し立てることもできません。
今回は、高齢の親の将来が心配な方に向けて、成年後見人にはどんな人がなり、どんな条件が必要なのか、家族が後見人になる場合のメリットや注意点について紹介します。
なお、成年後見制度について詳しく知りたい方は以下のサイトや記事も併せてご参照ください。
●成年後見制度について詳しくはこちら
成年後見人になるのは誰が多い?
特定の資格がなくても、家庭裁判所からの認定があれば、成年後見人になることが可能です。しかし、法的な手続きや契約など大きな責任を伴うため、後見人にふさわしい人、法的になれない人がいます。以下で詳しく見ていきましょう。
成年後見人になれる人
成年後見人には、本人(被後見人)の家族・親族、または弁護士、司法書士、介護福祉士などの法律・福祉の専門家がなるケースが多いですが、本人が希望し、家庭裁判所が認めれば、友人や知人がなることも可能です。
ただし、先述したように、成年後見人は、たとえば預貯金口座からのお金の引き出し、保険の契約・解約、不動産の売買など、責任のある作業を本人の代わりに行います。そのため、成年後見人であるという自覚を持ち、誠実かつ的確に職務を行える人が望ましいでしょう。なお、成年後見人による不正防止のため、家庭裁判所が必要と判断したときは、成年後見人を監督する「成年後見監督人」が選任されることもあります。
成年後見人になれない人
上記でも述べたように、法定後見制度の場合、家庭裁判所が成年後見人を選任します。その際、民法第847条により、未成年者や破産者、被後見人に対して訴訟を起こしたことがある人などは、後見人の不適格者とされ、成年後見人になることができません。
成年後見人はどんなときに必要?
ここまで成年後見人になれる人を紹介してきましたが、そもそも成年後見人が必要になるのは、本人の判断能力が低下し、財産を適切に保護しなければならなくなったときです。具体的にどのような場合があるのか見ていきましょう。
親族が認知症になったとき
成年後見制度を利用するきっかけの多くは家族が認知症を発症したことです。裁判所が公開している「成年後見関係事件の概況」(令和5年1月~12月)※によると、成年後見の開始原因の約62.6%が認知症となっています。家族が認知症になると、想定されるのは以下のようなリスクです。
・銀行口座が凍結される
・相続の遺産分割協議ができない
・不動産売買や施設入居の契約を結べない
・不当な契約や詐欺の被害に遭いやすい
家族の認知症発症は、これらのリスクを避けたいという思いから、法定後見人を立てるタイミングとなるのです。
●法定後見制度について詳しくはこちら
元気な人が将来の備えをしたいとき
ここまで述べてきたのは判断力が衰えた後に対処するケースでした。しかしまだ元気なうちに、判断能力の衰えに備えて成年後見制度を利用するケースもあり、前述の「任意後見制度」がこれに当てはまります。この制度では、自ら選んだ後見人(任意後見人)に、代わりにしてもらいたいことを契約で取り決めておくのが特徴です。
●任意後見制度について詳しくはこちら
成年後見人が代理でできること
成年後見人が行う手続きは、認知症や障害の程度など個人の状況に応じて変わってきますが、一般的には以下のような手続きを行うケースが多いです。
・金融機関の手続き
・不動産の売買
・遺産の分割協議
それぞれ詳しく解説していきます。
金融機関の手続き
認知症と診断されると、詐欺や横領などの犯罪に巻き込まれることを防ぐため、銀行の口座が凍結されます。この場合、本人や家族・親族であっても、口座からの入出金や解約はできません。しかし、成年後見人であれば、本人の生活費や医療費が必要になったとき、本人に代わって手続きや引き出しを行えます。
不動産の売買
認知症のように「意思能力」がないと認められる場合、不動産売買をはじめとする契約は無効になってしまいます。そのため、成年後見人を立てて、本人の代わりに契約の締結や金銭のやり取りを行う必要があります。
成年後見人が不動産の売買を行う場合は、被後見人のために必要であると認められるときで、たとえば、被後見人が介護施設に入居する際に、不動産の売却代金をその費用に充てるといったことが挙げられます。
●認知症の親の不動産売却について詳しい記事はこちら
遺産の分割協議
遺産を相続するにあたって相続人が複数人いる場合、遺産分割協議が発生します。遺産分割協議は、相続人全員で進めなくてはならず、判断能力がないとされる人が会議に参加することは困難を伴います。スムーズな協議を行うためにも成年後見人が必要となるでしょう。
家族が成年後見人になるメリットと注意点
先述の通り、親族が成年後見人になることは可能です。しかし、家族・最高裁が公開する「成年後見関係事件の概況」(令和5年1月~12月)※によると、弁護士や司法書士など、親族以外が成年後見人に選ばれるケースが8割を超えており、配偶者や親兄弟などの親族が成年後見人に選ばれる割合は18.1%と少ないのが現状です。ですが、身近な人が成年後見人になることにはメリットもあり、最高裁判所は、「身近な親族を選任することが望ましい」という考え方を示しています。では具体的にどのようなメリット、注意点があるのでしょうか?詳しく見ていきましょう。
メリット
弁護士や司法書士、社会福祉士などの第三者が成年後見人になる場合、知らない他者に財産を任せることになってしまいます。たとえば実家を売却してその費用を施設への入居費用に充てたいと考えていても、実際に決めるのは成年後見人なので、家族としては納得いかないものになってしまうこともあります。また、弁護士や司法書士に成年後見人を依頼した場合、被後見人の資産に応じて1か月で2万~6万円程度の報酬を支払う必要がありますが、家族の場合原則報酬がかからないのもメリットです。
注意点
一方で、家族が成年後見人になると、親しい間柄だからこその対立や、財産の使い込みといったトラブルが発生する恐れもあります。また、財産目録や収支報告書などの書面を作成し、定期的に家庭裁判所に提出しなければならず、成年後見人を務める人にとって大きな負担となるため、注意が必要です。必要な書類のやりとりについては、法律の専門家に依頼し、助けを借りることも大切でしょう。
親が元気なうちは家族信託という選択肢も
ここまでは成年後見人について紹介してきましたが、親が元気なうちに、不動産や株式などの財産を家族に託し、管理・処分を任せられる「家族信託」という制度もあります。この制度には家庭裁判所は関与しないため、親が認知症になっても成年後見人を立てる必要がなく、家族が親の預金の管理や不動産売却を行うことができます。費用の面でもかかるのは初期費用のみで、ランニングコストは発生しないことが多いため、親が元気なうちに、家族信託を検討してみるのもよいでしょう。
高齢の親の不動産売却に迷ったらプロに相談を
高齢の親に認知症の症状が出てきたり、親が施設に入居するため家を売却して入居費用に充てる必要が生まれたりと、ライフステージとともに家族を取り巻く環境は変化していきます。親の自宅を売却したいけれど、どのような手順を踏んだらよいか分からないという方、将来の売却に備えて今のうちに準備しておきたいという方は、一度、不動産の専門家に相談してみてはいかがでしょうか?
三井のリハウスでは、不動産に関するあらゆる無料相談を承っております。また、累積取扱件数100万件以上の実績や、業界最大級のネットワークを生かした不動産査定も無料で行っています。実家の売却を検討している方や、手放す方法が気になっている方は、ぜひ一度、三井のリハウスの不動産査定をご活用いただき、お気軽にご相談ください。お客さまの大切な自宅をよりよい形で売却するために、全力でサポートいたします。
●無料査定のお申し込みはこちら
●不動産売却についてのご相談はこちら
●リハウスAI査定はこちら
※出典:成年後見関係事件の概況(令和5年1月~12月),最高裁判所事務総局家庭局
https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/2024/20240315koukengaikyou-r5.pdf
(最終確認:2024年8月30日)


監修者:ファイナンシャル・プランナー 大石泉
株式会社NIE.Eカレッジ代表取締役。CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士などの資格を保有。住宅情報メディアの企画・編集などを経て独立し、現在ではライフプランやキャリアデザイン、資産形成等の研修や講座、個別コンサルティングを行っている。