不動産売却の基礎知識!知っておきたいポイントまとめ

不動産売却は、人生で何度も経験しないため、分からないことが多く、失敗するのではないかと不安になる方もいるでしょう。この記事では、仲介を依頼する不動産会社の選び方や税金・節税対策、手続きの流れなど、不動産売却の基礎知識をまとめました。よくある疑問は事例を用いて分かりやすく解説します。

目次
  1. 【基礎知識】不動産の売却方法
  2. 【不動産売却の基礎知識】流れ
  3. 【不動産売却の基礎知識】かかる費用・税金
  4. 【不動産売却の基礎知識】事前準備
  5. 不動産売却における査定の基礎知識
  6. 不動産売却に最適なタイミングは?
  7. 不動産売却理由ごとの注意点
  8. 特殊な不動産売却とその注意点
  9. 不動産売却について、リアルな実態をプロにインタビュー
  10. 不動産売却は会社選びから!
記事カテゴリ 売却 費用
2025.03.19

【基礎知識】不動産の売却方法

不動産を売却するには「仲介」と「買取」の2つの方法があります。

仲介

仲介による不動産売却とは、所有するマンションや一戸建て・土地を売却する際、不動産会社に仲介を依頼して一般の個人から買主を探してもらうことです。不動産売却のなかでは一般的な方法です。

買取

買取とは、不動産買取業者に物件を直接買い取ってもらう方法です。買主を探す必要がないため、迅速に売却できます。ただし、仲介と比べると成約価格が6割~8割程度になることが多いので注意が必要です。

●仲介と買取について詳しい記事はこちら

売り出し中になっている不動産

【不動産売却の基礎知識】流れ

不動産売却の流れは、大きく以下の6ステップに分けられます。

1.査定
2.媒介契約
3.売却活動
4.売買契約
5.決済・引渡し
6.確定申告

6つのステップの流れとそれぞれのポイントを把握して手続きを進めていけば、スムーズかつ満足のいく売却につながるでしょう。

不動産売却の流れ

なお査定の期間は、依頼する査定の種類によって変動します。査定方法とその結果が出るまでの期間について、詳しくは以下の記事が参考になります。

●不動産査定の種類と結果が出るまでの期間について詳しい記事はこちら

1.査定

不動産売却をするとき、まずやることは所有している物件の査定です。不動産会社の査定を受ける際には、担当者の対応や説明の丁寧さ、売却計画の提案力などをチェックしましょう。不動産査定の種類やポイントは後述します

2.媒介契約

査定を依頼した不動産会社のなかから、信頼できる会社と媒介契約を結びます。媒介契約とは、不動産会社に売主と買主の仲介をしてもらう契約のことです。「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の3つがあり、契約条件や売主への報告頻度が異なります。それぞれの媒介契約の詳細については、以下の記事をご参照ください。

●媒介契約について詳しい記事はこちら

3.売却活動

媒介契約後は、不動産会社と一緒に売却活動を行います。不動産会社は広告・宣伝活動を行い、売主は内覧の準備や対応にあたります。目標時期までに購入希望者が見つからない場合は、不動産会社と相談しながら、売り出し価格やホームページの掲載内容を見直すことがおすすめです。

不動産売却の相談をする夫婦

4.売買契約

購入希望者から購入申込書を受け取り、記載された希望条件の折り合いが付いたら売買契約に進みます。不動産売買の契約締結時には、買主から手付金を受け取るのが一般的です。手付金の相場は売買価格の5%~10%とされています。

5.決済・引渡し

売買代金の決済と引渡しは同日に行うのが一般的です。買主が住宅ローンを利用する場合は、その金融機関で行われます。売主、買主、不動産会社の担当者のほか、司法書士が立ち会って登記手続きも行います。

鍵や必要書類の引渡しも行うため、売主は引渡し日までに、引越しや書類の準備を済ませておかなければなりません

6.確定申告

不動産を売却したら、翌年の2月中旬~3月中旬頃に確定申告を行います。不動産売却によって利益が出たときの確定申告は必須です。もし赤字になってしまっても、特例が利用できる場合があるので、忘れずに行いましょう。

不動産売却のスケジュールを示したカレンダー

【不動産売却の基礎知識】かかる費用・税金

不動産売却には、さまざまな費用と税金が発生します。

費用

不動産売却にかかる費用総額は、物件価格の約7%~8%になるといわれます。そのため、必要なタイミングでスムーズに支払えるよう、主な費用の内訳を把握しておきましょう。

不動産売却にかかる費用ポイント
仲介手数料 ・売買を仲介する不動産会社への成功報酬
・売買契約を結ぶときに半金、引渡し時に残りの半金を支払うのが一般的
引越し費用・新居に移るまで仮住まいになるときは、引越しが2回になることも踏まえておく
登記費用 ・不動産登記の際に発生する登録手数料のこと
・住宅ローンで購入した不動産を売却する場合には「抵当権抹消登記」をする必要がある
・司法書士へ依頼する場合は1万円~10万円程度
・不動産の所有者が変わったことを示す「所有権移転登記」は買主が負担することが一般的

仲介手数料には、宅地建物取引業法で定められた上限があります。上限は売買価格によって決まっており、売買価格が400万円以上の場合は「売買価格(税抜)×3%+6万円+消費税」です。

新居に移るまで仮住まいとなるときは、引越しが2回になるため、あらかじめ引越し費用を確認しておくとよいでしょう。

上記のほか、住宅ローンが残っているときは一括返済手数料がかかることもあります。また、必要に応じてハウスクリーニング費用や家財の処分費用などもかかるでしょう。確定申告を行う際に、仲介手数料をはじめとする諸費用を経費に入れることで、後述の譲渡所得にかかる税金を節税できることがあります。自分ではよく分からず困ったときには、不動産会社や税理士などのプロに相談してみましょう。

●仲介手数料について詳しい記事はこちら

不動産売却を考える夫婦

税金

不動産売却を検討している方にとって、税金は特に大きな不安要素となりがちです。以下は、不動産売却にかかる主な税金をまとめた一覧表です。ぜひ参考にしてみてください。

税金概要
譲渡所得にかかる税金・不動産を売却して利益が出ると「譲渡所得」とされ、譲渡所得に応じた所得税と住民税が発生する
・これらの税金をまとめて「譲渡所得税」と呼ぶこともある
・譲渡所得にかかる税金の税率は、売却した不動産の所有期間によって異なり、5年以下は39.63%、5年超は20.315%(所得税、住民税、復興特別所得税を含む)になる
印紙税 ・印紙税は、不動産の売買契約書に印紙を貼付することで納める税金
・納税額は契約書の記載金額によって異なり、契約書に貼って消印することで納税と見なされる
・不動産売買では契約書を2枚作成し、かかる印紙税は売主と買主がそれぞれ負担する
・2027年3月31日までは不動産売買契約書の印紙税の軽減措置により、本則の半額の税額となる
登録免許税 ・登録免許税は「登記や登録等を受ける者」が納める税金
・不動産売却では、課税標準額に税率をかけて算出され、抵当権抹消登記は売主に、所有権移転登記は買主にかかることが一般的
固定資産税・固定資産税は、毎年1月1日に土地や建物の所有者に課される税金
・年度途中に売却が完了した場合、売主と買主の話し合いによって、引渡し日の起算日から日割り清算をするのが一般的

もし譲渡所得が出ても、特例を利用すれば節税が可能です。代表的なのが「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」で、マイホームを売却した譲渡所得から最大3,000万円を控除できます

ただし、3,000万円の特別控除と住宅ローン控除は併用できないため、住み替えの際はどちらの特例を利用するか検討が必要です。譲渡所得の金額が少ないときは、住宅ローン控除を優先したほうが節税効果を得られる場合もあるため、売却前に比較するとよいでしょう。

●3,000万円の特別控除の特例について詳しい記事はこちら

●住宅ローン控除について詳しい記事はこちら

不動産売却にかかる税金

【不動産売却の基礎知識】事前準備

不動産売却で大切なポイントは、書類の事前準備と不動産会社選びです。

書類

不動産売却に必要となる、主な書類は以下の通りです。

・登記済証(権利証)または登記識別情報
・本人確認書類
・固定資産税の納税通知書の写し
・実印・印鑑証明書
・固定資産評価証明書
・住民票
・抵当権抹消書類
・(マンションや一戸建ての場合)物件の間取り図
・(一戸建てや土地の場合)土地測量図・境界確認書

マンション、一戸建て、土地によって必要な書類は異なります。不動産会社に確認しながら用意するとスムーズでしょう。

●不動産売却に必要な書類について詳しい記事はこちら

不動産会社の選び方

より高く早く売るには、不動産会社のサポートが欠かせません。大手から中小までさまざまな不動産会社があるなかで、選ぶ基準にしたいのは次の6つのポイントです。

・物件のあるエリアに精通している
・営業店舗が多い
・対応がスピーディー
・提案力がある
・売却実績が豊富
・インターネット広告が充実している

不動産会社を選ぶときのポイントとして知りたい情報は、インターネット検索である程度把握できるほか、査定に際した担当者とのやりとりを通じて分かります。不動産会社探しのコツは、以下の記事で解説しています。

●不動産会社はどこがいいかの判断基準について詳しい記事はこちら

不動産売却をサポートする不動産会社の担当者

不動産売却における査定の基礎知識

不動産売却を検討中の方が、最も気になるのは「いくらで売れるのか?」ということでしょう。所有している不動産がどの程度の価格で売れるのかを、おおまかに把握できるのが不動産会社による「査定」です。

不動産会社が市場における推定価格を算出し、売主は、提示された査定額(査定価格)を参考に売り出し価格を決めます。不動産売却を考えている方は、査定の種類とポイントについて理解しておきましょう。

査定の種類

査定には、「AI査定」「簡易査定」「訪問査定」の3種類があります。具体的な方法とメリットは、以下の通りです。

査定の種類査定方法メリット
AI査定入力された基本的な物件情報と蓄積された過去の取引事例データをもとに、AIが自動的に査定額を算出する電話番号の入力が不要なため、営業電話を受けずに査定結果が分かる
簡易査定不動産会社の担当者が、物件に関する基本的なデータにもとづいて査定額を算出するスピーディーにおおまかな査定額が分かる
訪問査定不動産会社の担当者が現地調査を行い、建物や土地の状況、周辺環境などを考慮して査定額を算出する査定の精度が高い

また、それぞれの査定に向いている人は以下の通りです。

査定の種類向いている人
AI査定基本データだけのおおまかな査定額を即時に知りたい人
簡易査定データと不動産会社の知見を合わせたおおまかな査定額を数日以内に知りたい人
訪問査定精度の高い査定結果を得たい人や担当者の対応を確認したい人

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査定を行う不動産会社の担当者

査定を受けるときのポイント

査定を受けるときのポイントは、自分でも相場を調べておくことです。査定額と相場を比較することで、市場価格と乖離した価格で売り出すリスクを減らせるからです。

相場を把握するには、不動産のポータルサイトや国土交通省のサイト「不動産情報ライブラリ」「REINS Market Information(レインズマーケットインフォメーション)」、チラシなどで実際の取引価格を調べてみましょう。三井のリハウスでも、マンション、一戸建て、土地、それぞれの都道府県ごとの相場が調べられます。ぜひご活用ください。

●不動産相場を調べたい方はこちら

【マンションの相場価格を調べる】
●首都圏
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三重県

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【一戸建ての相場価格を調べる】
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【土地の相場価格を調べる】
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相場と大きく異なる査定額が出た場合は、その根拠について担当者に質問してみましょう。明確で納得できる説明をしてもらえれば、売り出し価格を決めるのに役立つほか、その不動産会社の誠実さも確認できます。

●査定について詳しい記事はこちら

不動産売却のチェックリスト

不動産売却に最適なタイミングは?

ここでは、不動産の売り時を判断する主な要素について見ていきましょう。

市況

市場で取引される不動産価格が上がっているか、下がっているかを把握することで、売り時を見極めやすくなります。不動産価格の動向を把握するには「不動産価格指数」が役立ちます。不動産価格指数とは、国土交通省が公表している不動産取引の統計データのことです。

不動産価格指数を表したグラフ

(※1)国土交通省より引用

上記は、国土交通省が公表している2024年10月分の不動産価格の動向グラフです。グラフを見ると、近年の不動産価格は全体的に上昇傾向にあり、特にマンション価格の上昇が大きいと分かります。

築年数

築年数から売却のタイミングを判断するなら「なるべく早め」がおすすめです。築年数が新しいと高く売れる傾向があるからです。木造一戸建ての場合、税法上の耐用年数は築22年のため、それをすぎると住むことは可能な一方で、資産価値はほとんどなくなってしまうでしょう。マンションも、築25年~30年ほどで設備の老朽化が進み、価値が下落する場合が多いとされています。

所有期間

不動産の所有期間で売却のタイミングを見極めるには、譲渡所得への課税率の観点から5年が1つの目安です。所有して5年以下の不動産は「短期譲渡所得」の区分になり、5年超の「長期譲渡所得」に比べて税金が倍近くかかるからです。具体的な違いは以下の表にまとめました。

所有期間区分所得税(復興特別所得税を含む)住民税
5年超長期譲渡所得15.315%5%
5年以下短期譲渡所得30.63%9%

ただし、3,000万円の特別控除の特例を利用するのであれば、築年数が新しいうちに売却したほうがよい場合もあります。専門知識の豊富な不動産会社は、このような複数のポイントを踏まえて売却のタイミングを提案できるため、不安な点があれば相談することがおすすめです。

季節

春の新生活がスタートする前の1月~3月は、新年度・新学期を迎える前の生活環境の変化に伴い、不動産の需要が高く売れやすい時期です。従って1月~2月に売買契約ができれば、2月~3月の引渡しが進めやすいでしょう。売却活動から引渡しまでには3か月~6か月かかることを意識したうえで、前年の10月~11月頃までには不動産会社と媒介契約を済ませておきましょう。

●家を売るタイミングについて詳しい記事はこちら

不動産売却に最適なタイミング

不動産売却理由ごとの注意点

不動産売却は、以下のようなさまざまな理由で行われます。

・住み替え
・転勤
・相続
・離婚
・住宅ローンの残債がある

ここでは、相続や離婚といった場合も含め、知っておきたい不動産売却時の注意点をケース別に解説します。

住み替えが理由の場合

「より便利な場所に引越したい、広い家に移りたい、新しい家に住み替えたい」など、住み替えは不動産売却によくある理由です。マンションから一戸建て、一戸建てからマンション、分譲住宅から賃貸マンションやアパートへの住み替えなどさまざまなケースがあるでしょう。住み替えの場合、所有する不動産を売却してから住み替え先の不動産を購入する「売却先行」と、住み替え先の不動産を購入してから自宅を売却する「購入先行」の2つの方法があります。それぞれメリットと注意点があるため、どちらが自分に適しているか慎重に検討しましょう。

●売却先行と購入先行について詳しい記事はこちら

転勤が理由の場合

急な転勤で、自宅を売却するケースもあります。転勤先から戻れる可能性があれば、所有している物件を賃貸に出すことも1つの選択肢ではありますが、管理に手間がかかることもあります。売却するか賃貸に出すか悩む場合は、専門知識の豊富な不動産会社に相談してみましょう。三井のリハウスでは、売却も賃貸もサポートが可能ですので、ぜひご相談ください。

●賃貸経営でお困りの方はこちら

相続が理由の場合

相続した不動産を売却する場合、重要なのは相続人の確定です。遺言書がなければ、法律で定められた相続人である「法定相続人」全員の共有財産となるので、どのように処理するか相続人同士で協議が必要です。「代表者が相続して売却し代金を分ける」「相続人全員の共有名義にしてから売却する」など、よく話し合ったうえで決定しましょう。

分割協議がまとまったら、不動産の「相続登記」を行ってから売却に移ります。相続登記は、相続した不動産の所有権を相続人に変更する手続きです。被相続人名義のままでは売却ができないため、注意が必要です。

●相続登記について詳しい記事はこちら

●相続登記の義務化について詳しい記事はこちら

相続による不動産売却は手続きが煩雑なうえ、期限の決まった特例もあり、手早くたくさんの項目を確認しなければならず大きな負担となるでしょう。三井のリハウス・シニアデザインでは、相続に伴う事務手続きから不動産売却までワンストップでサポートする「相続おまかせ売却パック」をご案内しています。相続による売却方法でお悩みの方はお気軽にご相談ください。

●相続おまかせ売却パックのお問い合わせはこちら

不動産売却について悩む夫婦

離婚が理由の場合

夫婦が離婚する場合、結婚生活で築いた財産を分け合う「財産分与」の手続きが必要です。住まいは売却・現金化して分け合うのが最も簡単な方法ですが、注意したいのは名義と売却のタイミングです。住まいが夫婦の共有名義である場合、相手の同意がなければ売却できません。なかなか合意に至らないときの相談先は弁護士になるでしょう。

また、住まいを売却するのに最適なタイミングは、夫婦の状況によります。離婚後に連絡を取りたくなければ離婚前が最適でしょう。なぜなら、売却活動では内覧時の対応や売却金額の交渉など、連絡や相談が必要になることが度々あるためです。

納得のいく売却活動をしたい場合には離婚後に売却するとよいでしょう。そうすることで、早く離婚したいあまりに焦って安く売却してしまうのを防げます。

●離婚に伴う家や住宅ローンの財産分与について詳しい記事はこちら

住宅ローンの残債がある場合

住宅ローンが残っている不動産でも、売却は可能です。ただし、売却するには抵当権を抹消する必要があります。抵当権とは、住宅ローンの担保として金融機関によって設定されるもので、ローン返済が滞った場合、その不動産を売却して代金を回収できる権利のことです。

この抵当権を抹消するには、住宅ローンを完済しなければならないため、住宅ローンの残債を調べてから家の査定を受け、売却代金でローンを完済できるかどうかを確認しましょう。ローン残債が売却代金を上回る「オーバーローン」の場合は、自己資金で補う、住み替えローンを利用するなどの対策が必要です。

●住宅ローンの残債がある不動産売却について詳しい記事はこちら

不動産売却における引渡しの様子

特殊な不動産売却とその注意点

ここからは、扶養家族が不動産売却を行う場合や、認知症の親の不動産を売却する場合といった特殊な不動産売却について見ていきます。

扶養家族が不動産を売却する場合

扶養家族とは、ほかの家族の収入によって養われている人のことです。扶養家族がいる人は、社会保険料の控除や所得税の控除(配偶者控除、配偶者特別控除)を受けられます。

不動産売却のなかには、扶養に入っている配偶者が「親から相続した不動産を売却したい」というケースもあります。扶養家族が不動産を売却して利益を得た場合、通常であれば、社会保険の扶養から外れることはありません。ただし、配偶者控除や配偶者特別控除といった所得税の控除から外れる場合があります。

たとえば、不動産の譲渡所得も含めて所得が48万円(2019年分以前では38万円)を超えて発生すると、配偶者控除が受けられません。さらに、配偶者には譲渡所得に対する税金の支払いが発生します。

しかし、一度配偶者控除が適用されなくなった場合でも、翌年以降また所得が少なくなれば、再び控除を受けられるようになります。不動産を売却する前に名義を世帯主に変更する方法もありますが、贈与税が発生する場合もあるので、判断しかねるときには税理士に相談してみましょう。

認知症の親の不動産を売却する場合

不動産売却は、登記簿に記載されている名義人自身にしか行えないことになっています。しかし、「親が認知症になり介護施設へ入居するので実家を売却したい」という場合、親の代わりに不動産売却を行うにはどうすればよいのか、というのもよくある疑問の1つです。

認知症が進んでいて本人の意思確認が難しいと診断される場合は、「法定後見制度」を利用し、不動産売却を行います。法定後見制度とは、本人が重要な手続きや契約を行えなくなった場合、代行する後見人を家庭裁判所が選ぶ制度のことです。自治体の家庭裁判所に審判の申し立てを行い、裁判所の審判を経て後見人に選定されると、本人に代わって不動産売却を進められます。

親の判断能力が残っている間に委任状を書いてもらうことで売却が進められるケースもあるので、実家をどのようにするかは親が元気なうちに相談しておくのがおすすめです。

●法定後見制度について詳しい記事はこちら

扶養家族や認知症になった親の不動産売却

不動産売却について、リアルな実態をプロにインタビュー

不動産売却について、リアルな実態を三井のリハウス社員に聞いてみました!よくある質問や、営業歴の長い三井のリハウス社員が経験したエピソードをご紹介します。

よくある売却理由は?

理由としては、住み替えのための売却が多い印象です。子どもの成長に合わせて、以下のようなタイミングで引越しをするケースがよく見受けられます。

・子どもが生まれるタイミング
・子どもが小学生になるタイミング
・子どもが大学を卒業し巣立つタイミング

特に子どもが中学受験をする場合は、中学入学のタイミングで住み替えをされる方も多いですね。

住み替えのために不動産売却の説明を受ける家族

売却初心者に必要な心構えは?

とにかく焦らないことが大切です。焦る気持ちは分かりますが、不動産が売れるかどうかはタイミング次第なところがあります。売り出し価格を相場より高くしていても、その物件を気に入ったら買う人はおり、反対に、条件面にはあまりこだわらず、安ければ買うという人もいます。売れるかどうかは、こうした需要・供給のバランスと価格次第ですので、焦らないことがより高く売るコツだと思います。

たとえば、5,500万円が相場の物件を売るとします。最初は相場より高めの6,000万円くらいで売り出し、1か月半たっても売れない場合は、以下のような対応が考えられます。

・パターンA:まず5,980万円に値下げし、売れない場合はさらに5,580万円まで下げる(段階を踏んで値下げする)
・パターンB:5,380万円くらいまで一気に値下げする

とにかく早く売って安心したい方には、パターンBがよいでしょう。ただし早さを優先する場合、相場よりも価格を下げないと成約が取れにくく、手元に残る金額が少なくなる恐れがあります。一方、段階的に価格を下げるパターンAのほうが、時間はかかるものの高く売れる可能性があります。売却を急いでいないのであれば、焦らず、段階的に値下げをして買い手を待つのがよいでしょう。

住み替えの売却エピソード

住み替えで大変だったのが、住んでいる家の売却と、引越し先の住み替えのタイミングがずれたときです。

住み替えの方法には、新しい家を先に買ってから住んでいる家を売る「購入先行」と、もとの家を売ってから新しい家を探す「売却先行」があります。一般的なのは購入先行のほうですが、購入先行で中古物件を買う場合、購入先物件に住んでいる人の退去スケジュールによって、引越しの日程が変わります。

予定通りに退去してもらえれば問題ありませんが、遅れるとさまざまな調整が必要です。たとえば、下記のようなスケジュールを想定していた場合、購入物件に住んでいる人の退去が1か月以上ずれると、自分たちの引越しや引渡しのスケジュールもずれてしまいます。

・8月に購入物件に住んでいる人が退去する
・9月に新しい家に引越す
・10月に今の家の引渡しを行う

スケジュールがずれる場合は、待つ代わりに価格を下げてもらうといった交渉を行うことがあります。初めから余裕を持ったスケジュールにしておくことが大切ですが、売主・買主双方の不動産会社で事前にしっかり話をしておくこともトラブル防止になります。

また、契約から引渡しまで時間が空くと、物件の状態が変わってトラブルになることもあります。引渡しまでは所有者に責任があるため、子どもが壁に穴を開けたといった場合は売主に修繕する責任がありますが、備え付け家具の小さな傷、日焼け程度なら経年劣化として扱われることが一般的です。スムーズな住み替えのために、こうした可能性も頭に入れておきましょう。

転勤の売却エピソード

ご家族で住んでいる不動産を売却する場合、転勤するご本人が先に引越して、残ったご家族が残務を引き受けることが一般的です。私の経験では、旦那さま名義で所有している物件にご家族で住んでおり、辞令が出た旦那さまが先に引越し、奥さまが残務を引き受けるケースが多くありました。注意点は、旦那さまが引越す前に本人確認を終わらせ、売却に必要な各種書類をそろえておくことです。こうしたケースでは、名義人である旦那さまがいるうちにできる限りの手続きを終えることが、スムーズに売却するためのコツです。

住宅模型と鍵

相続物件の売却エピソード

相続した物件を売却する場合や、共有で不動産の相続を受けている場合、相続人のなかに遠方に住んでいる方がいると手続きが大変でした。

たとえば、相続した物件が東京都にあり、相続を受けた3人のうちの1人が青森県に住んでいるといったケースです。物件を売るためには、本人確認や委任状といった対面で行う手続きがあるため、遠方に住んでいる方がいるとやりとりが大変でした。

また、相続人が複数人いると、売却の話を進めていたのに、途中で誰かが「売りたくない」と心変わりをする場合もあります。ある程度、不動産会社が個別に話をしたり、対応の提案をしたりしますが、それぞれが納得しなければ売却はできません。相続物件の売却をする際は、相続人の意思を固めておくことが大切です。

資産整理の売却エピソード

お金に困っているという理由で売却をしようとしていた方がいたのですが、売却活動の途中で物件を差し押さえられてしまい、売却できなくなったというケースがありました。差し押さえは、事前に督促が来ますが、具体的な日時の通達はありません。そのため、差し押さえられないか、あらゆる可能性について入念に確認しておくことが必要です。というのも、税金や住宅ローンなどの支払いが滞ることによる差し押さえ以外に、離婚が絡んだ資産整理において、元配偶者が一方的に物件を差し押さえてしまったというケースもあるためです。

また、シニアの方の不動産売却で、老人ホームに入るための頭金を売却で賄いたいケースは大変でした。家の売却は所有権を抹消してからでないと入金されないので、売却してお金を手にしてから頭金を支払うとなると、売却後、老人ホームに入居できるまで住む場所がなくなってしまいます。対処法としては、「売却後も一定期間住まわせてほしい」といった交渉を行い、「引渡し日を、残代金決済後から何日後とする」といった形で引渡し猶予を設けます。条件を受け入れる代わりに値下げ交渉になることもありますが、値下げをする場合は賃貸の家賃相場などを基準に、双方が納得できる額を探ることになるでしょう。

離婚の売却エピソード

離婚における不動産売却では、夫婦の意見が合わないことがよくあります。たとえば、家を出て行く夫は、物件を売って現金化して財産分与をしたいと思っているけれども、妻のほうは売らずに住み続けたいといったパターンです。売却の手続きが進んでからこうした状況になると、買い手にも迷惑がかかってしまうため、夫婦で意見を合わせてから売却を依頼することが大切です。

不動産売却をサポートする不動産会社

不動産売却は会社選びから!

不動産売却は、不動産会社と協力し合って進めていくものです。今回の記事でご紹介したこと以外に分からないことや不安なことが出てきたときでも、信頼できる不動産会社が一緒なら安心して売却を進められます。後悔しないよう、査定時の対応や実績の豊富さを基準に、ベストパートナーと思える不動産会社を選びましょう。

三井のリハウスは、累積取扱件数100万件を超える豊富な実績で不動産売却をサポートいたします。全国のさまざまな地域で店舗を展開しているので、エリアに密着した売却活動が可能です。さらにWebやメルマガ、店頭での直接のご案内など、多角的なサービスでスムーズな売却へ導きます。初めての不動産売却をお考えの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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※1出典:不動産価格指数(令和6年10月・令和6年第3四半期分)を公表 ~不動産価格指数、住宅は前月比1.0%下落、商業用は前期比0.6%上昇~,国土交通省 不動産・建設経済局不動産市場整備課
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/content/001859867.pdf
(最終確認:2025年3月4日)

監修者:ファイナンシャル・プランナー 大石泉

株式会社NIE.Eカレッジ代表取締役。CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士などの資格を保有。住宅情報メディアの企画・編集などを経て独立し、現在ではライフプランやキャリアデザイン、資産形成等の研修や講座、個別コンサルティングを行っている。