
実家の売却は相続の前と後で違いはある?どっちがいいの?税金・手続き・メリット・注意点を徹底解説
実家の売却は、相続の前と後どちらのタイミングで行うかによって、そのメリットや注意点が変わります。主に税制上の特例の適用有無や売却資金の使い道がポイントです。今回の記事では、相続前後に実家を売却するメリットと注意点を解説します。
目次
実家の売却は相続の前と後、どっちがいいの?
実家の売却は、相続の前と後で異なるメリットや注意点があります。一般的には、相続税が発生する場合は相続後に売却したほうがメリットは多く、相続税が発生しない場合は状況に応じて売却するか否かを考えることになります。自分にとって、どちらのタイミングがよりメリットがあるかを考えることが大切です。また、実家の売却に関して適用できる税金の特例にも違いがあります。
実家の売却を相続の前(生前)に行うメリット
実家の売却を相続前に行うメリットは、主に以下の3点です。
・複数の相続人がいる場合にトラブルを防止できる
・維持にかかる費用を節約できる
・親(本人)の介護費用や生活費に充てられる
それぞれ順番に解説していきます。
複数の相続人がいる場合にトラブルを防止できる
法定相続人が複数いる場合、遺産分割協議をして土地や建物を物理的に分割して相続するのは難しいことです。そのため、不動産そのものを現金化することで、相続人の間で公平な分配がしやすくなります。法定相続人が多数おり、現金がわずかで主な遺産が実家しかない場合には、おすすめといえるでしょう。
維持にかかる費用を節約できる
実家が空き家となった場合、売却すれば、固定資産税やメンテナンス費用はかからなくなります。
空き家の期間が長引いてしまうと、家の劣化が進行するほか、虫害や獣害が発生したり、犯罪に利用されたりするなど、近隣住民に迷惑がかかる恐れもあります。そのため、相続前に売却してしまうことがおすすめです。なお、相続手続き後に売却する場合においても、早めの売却がおすすめです。
親(本人)の介護費用や生活費に充てられる
たとえば実家の所有者が親で、本人が高齢で介護が必要な場合や、施設に入居する場合、その費用を売却金額で賄える可能性があります。
実家の売却を相続の前(生前)に行う注意点
実家の売却を相続前に行う注意点は以下の3点です。
・税制上の特例が適用されにくい
・所有者本人の判断が難しい場合は手続きが複雑
・売却することで相続税額が増える可能性がある
それぞれ順番に解説していきます。
税制上の特例が適用されにくい
生前に実家を売却する場合、相続時には既に不動産を売却しているため、相続財産を譲渡した際の特例を受けられません。しかし、相続後に家を売却する場合、売却の条件に応じて後述する税制上の特例が適用される可能性があります。
所有者本人の判断が難しい場合は手続きが複雑
所有者本人が実家を売却する場合、意思決定能力が正常であることが必要です。本人が認知症や老衰などで適正な意思表示が難しい場合、成年後見制度を利用しなければ売却できません。これにより手続きが煩雑化します。
●成年後見制度についてはこちら
売却することで相続税額が増える可能性がある
実家を売却し現金化すると、相続税の課税対象として計算される相続税評価額が高くなります。なぜなら、不動産は評価額が時価よりも低くなることが多い一方で、現金はそのままの金額で評価されるからです。そのため、相続税の課税対象となる場合には、売却後の現金が相続税額を押し上げるリスクがあります。
●相続税評価額についてはこちら
実家の売却を相続の後(相続時)に行うメリット
実家の売却を相続後に行うメリットは主に以下の2点です。
・相続税評価額が抑えられる
・売却時期の融通が利く
それぞれ順番に解説していきます。
相続税評価額が抑えられる
相続税評価額は、一般的に市場価格よりも低く評価されます。特に土地は、実際の成約価格よりも大幅に低くなることもあるため、不動産のまま相続することで相続税評価額が抑えられ、結果的に相続税を節税できる可能性があります。
売却時期の融通が利く
相続後の売却であれば、市場動向を見極めてから売却時期を決定できます。不動産市況は変動するため、高値で売却できそうな時期を選ぶことで、成約価格に差が出てくる可能性もあります。
●家を売るタイミングについてはこちら
実家の売却を相続の後(相続時)に行う注意点
実家の売却を相続後に行う注意点は、主に以下の3点です。
・相続登記が煩雑
・維持・管理費用がかかる
・特例の適用期限がある
それぞれ順番に解説していきます。
相続登記が煩雑
2024年4月から不動産を相続するには相続登記を行い、名義を変更することが義務化されました。この手続きは煩雑で、必要書類の収集や法務局への申請など、時間と手間がかかります。また、相続登記にあたり、登録免許税や必要書類の取得費用など、まとまった費用が発生することにも注意しましょう。
●相続登記にかかる費用についてはこちら
維持・管理費用がかかる
売却まで実家が空き家になる場合、建物の劣化が進むほか、不法侵入や放火などのリスクが高まります。定期的な清掃や換気、防犯などの管理が必要となり、費用も発生するでしょう。
また、相続後も固定資産税といった税金や火災保険料などの維持費がかかるため、売却までの所有期間が長くなるほど、これらの費用負担も大きくなります。
特例の適用期限がある
相続により取得した財産を一定期間内に譲渡した場合、相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費(譲渡所得を計算するうえで成約価格から差し引くことのできる費用)に加算できます。その結果、税金の支払いを抑えられます。
しかし、「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」の適用期限は、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年以内と設定されており、この期限をすぎると、特例の適用を受けられなくなるため注意しましょう。
●不動産の相続にまつわる税制上の特例についてはこちら
●相続に関する税金についてはこちら
相続前後どちらで売却するか迷った場合の判断基準
実家の売却を相続前後のどちらで行うべきか悩んでいる場合は、以下の3つの観点から判断することをおすすめします。
・複数の相続人の関係性
・税制上の影響
・本人や相続人の経済状況
それぞれ順番に解説していきます。
複数の相続人の関係性
不動産は平等に分けることが難しい財産です。相続財産が実家しかない場合、相続人同士の関係が良好でないと、不動産の分割方法や成約価格などを巡って争いが生じるリスクが高まります。このような場合は生前に売却し、現金化してから相続することでトラブルを回避できる可能性があります。
また、相続人のなかに実家に住み続けたい人がいる場合は売却する必要はありませんが、誰も住まない場合は空き家リスクや維持費の問題が発生するため、売却を検討しましょう。
税制上の影響
生前であれば、「マイホームを売ったときの特例」、相続後であれば「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」や「小規模宅地等の特例」を適用して支払う税金を抑えられます。
実家以外の相続財産の評価額や、実家の資産価値に応じてどちらを選択すれば税金を抑えられるかは変わってきます。後悔しないためにも、不動産会社や司法書士といった専門家と相談しながら検討しましょう。
本人や相続人の経済状況
本人の介護費用など、資金を調達したい場合に、生前に売却することで売却資金を目的の用途に活用できます。また、相続税は現金で納付するため、相続後の納税資金が足りないと見込まれる場合に、生前に売却をして事前に現金化しておくほうが相続人は慌てにくいかもしれません。
経済状況に合わせて最適なタイミングで実家を売却しよう
ここまで、実家を相続の前および後で売却するそれぞれのメリットや注意点を解説してきました。相続人・被相続人の経済状況や、税制上の観点などから、売却の最適なタイミングはそれぞれ異なります。
また、売却を成功させるためにはタイミングも大切ですが、売却をサポートしてくれる不動産会社選びも重要です。三井のリハウスでは、豊富な取引実績を生かした高精度な査定と地域密着型の店舗展開を強みに、納得できる不動産売却のお手伝いをいたします。ぜひお気軽にお問い合わせください。
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不動産鑑定士 竹内英二
株式会社グロープロフィット代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士をはじめとしたさまざまな資格を保有。不動産の専門家として、不動産鑑定やコンテンツのライティングなども行なっている。
https://grow-profit.net/